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Advanced Interviewアドバンス・インタビュー

2011-2-14 15:15第1回:小暮 聡主任開発員

準天頂衛星システムの立ち上げから関わるJAXA衛星利用推進センター/準天頂衛星システムプロジェクトチームの小暮 聡主任開発員に宇宙開発に携わるきっかけ、これまでのお仕事内容、みちびき開発における苦労などのお話を伺いました。

――宇宙開発に携わるようになったきっかけは何ですか。

小暮:さかのぼると子供の頃から宇宙やSFが好きでした。小学生のときに初めて父親に連れて行ってもらった映画がスターウォーズで、それがあまりに衝撃的でその日は興奮して眠れなかったぐらいです(笑)それに星空を見るのも好きで、幼稚園の頃は星座やそれにまつわるギリシャ神話をたくさん覚えていました。そういうこともあって、大学進学の際には航空学科を選びました。当時は宇宙飛行士になりたいと思っていましたね。

――大学では宇宙に関わることを学ばれていたのですか。

小暮:数値流体、計算機流体力学を研究テーマとして扱っていました。計算機を使って、真空までは行かないのですが、空気が薄くて、粘性が無視できる環境下での衝撃波の形成、伝播の様子や平板に流体を噴きつけた状態をシミュレーションしていました。応用例としては月面に着陸する際や離陸した直後など、ロケットエンジンから噴射したジェットが作る流れ場のシミュレーションに使えないかと考えていました。

―― これまでJAXAではどのような仕事をされてきましたか。

小暮:NASDA(現JAXA)に入社して2年間は筑波宇宙センターの中央追跡管制所に勤務になりました。そこは周回衛星の運用管制を行う部署で、ちょうどMOS-1(海洋観測衛星「もも1号」)の後期利用段階が終わるところで、色んな運用実験を経験できましたね。その後東京の本社・追管に異動になり、予算や業務計画を担当することになりました。筑波に戻ってきてからはミッション推進センターという部署で小型衛星や大学のミッションに関わって、その経験もあって小型衛星のプロジェクトをやっているアメリカのコロラド大学に1年間留学して宇宙機システム設計コースを受講、修士をとってきました。

―― アメリカ留学中の生活はいかがでしたか。

小暮:元々2年の修士課程を1年で取るために、かなりきつい1年でしたね。入学した初日に大学の学生窓口の人に1年では無理だと断言されてしまいました。そうはいっても直属の上司からは「君なら1年で帰ってこられると信じている。」、と言われてしまって・・・その1年間は授業に出て、家帰って宿題して、の繰り返しの毎日でした。

留学を終えて衛星ミッション推進センターに帰ってきたころ、民間が準天頂衛星システム計画を立ち上げようとしていました。それが2001年のことです。準天頂衛星システムの当初の計画は、民間の提案からスタートし、民間が準天頂衛星システムを使った移動体通信・放送事業を行い、官が衛星測位の研究開発を民間の衛星に相乗りさせるという官民連携によって行う予定でした。その頃は自分と上司の2人しか担当がいなくて、そんな中で、官民共同の技術検討部会や、日米GPS会合のテクニカルワーキンググループが立ち上がり、人手が足りなくて苦労しましたね。

―― 現在、準天頂衛星プロジェクトでの担当は何ですか。

小暮:準天頂衛星システムの営業、利用推進です。準天頂衛星システムはかなり応用範囲が広いため、色んな分野で使っていただけると思っています。現在はJAXAが行う多地点・多利用形態での技術実証実験に色んな企業や大学等に協力を呼びかけています。

―― 企業や大学等の参加状況はいかがですか。

小暮:多地点での準天頂衛星の効果を実証するために、タクシー会社やトラック運送業者、宅配事業者の方々に協力していただいてデータを取得することになっています。準天頂衛星初号機「みちびき」は昼間に日本上空にいるとは限らないので、夜間でもデータを取っていただけるよう、昼間だけでなく、夜間でも業務で市街地を走行している業態の企業の方に、データ取得への協力をお願いしたのですが、「みちびき」の注目度も高くなってきたのか、非常に積極的にご支援いただくことになり、大変感謝しております。データ取得のための機材を開発中で現在、準備段階ですが、日本中からたくさんのデータが集められて、「みちびき」の効果が検証されることを楽しみにしています。

さらに、データを取るだけではなくそのデータを使って火山の調査、自動車や鉄道の保安システムへの応用など、みちびきによる可視性の改善に期待して様々な研究に使いたいという積極的な大学や企業もいて、JAXAとの共同研究として進めたいと思っています。多地点・多利用形態での補完効果検証は、改善効果を確認するだけでなく、効果の限界、さまざまな条件下での効果を把握することが重要で、得られた知見を、これらの研究機関、企業とも共有して、新たな利用につなげて行きたいですね。

また、国際的にはマルチGNSS実証実験キャンペーンという枠組みの立ち上げを国連のGNSSに関する国際委員会を通じて呼びかけています。世界でいち早く多くの次世代測位衛星が利用できるアジア・オセアニア地域におけるGNSS(※)の利用促進のため、共同開発や共同実験を呼びかけています。

※1 GNSS:Global Navigation Satellite System(全世界的航法衛星システム)の略称。アメリカのGPSやロシアのGLONASS、ヨーロッパのGalileoなどの測位システムやそれらの補強システムの総称。

―― 開発初期から準天頂衛星システムに携わられているということですが、何か苦労した点などありますか。

小暮:今も悩んでいますが、GPSというシステムがあまりにすばらしいシステムであるために、GPSを補完補強する「みちびき」のキラーアプリケーションは何か?という問いかけへの答え探しが難しいですね。既に多くの方々がGPSを使っているので、準天頂衛星システムが完成すれば皆さんに使っていただけることは自信を持って言い切れるのですが、皆さんGPSの限界をさまざまな工夫をしながら使われているので、今の段階でやるかというと、どうしても慎重になる方々の方が多いんです。

やっと「みちびき」が上がって、戦略本部でも後継機の議論が始まったということで、民間企業も、実証実験等への参加に積極的になりました。

衛星開発においてはアンテナが難しかったです。初めは測位だけでなく通信ミッションもあったので、アンテナを指向させる方向やアンテナの搭載場所など、課題が多かったです。測位単独ミッションとなった後でも、みちびきは測位信号の種類が多く周波数の帯域が広いので、1本のヘリカルアンテナの形状、巻き方、素子数、給電方法、アレイ配置などに工夫が必要でした。GPSやGalileo(ヨーロッパが開発するGNSS)など同じ周波数を使用する測位システムと干渉が起きないよう、国際調整した範囲で性能を出さないといけなかったので苦労しました。

また軌道パラメータのチューニングも大変でしたね。アンテナの性能とも関連しますし、運用性や燃料の消費による寿命とのトレードオフを行い、最適なものにしました。

―― 最後に準天頂衛星システムへの思いと、今後の意気込みをお聞かせ下さい。

小暮:準天頂衛星システムを使った衛星測位技術の応用によって、高齢化社会、食料の自給率、環境といった日本が抱えている問題点に貢献できるといいなと思っています。また、どこでも位置情報が得られるというシームレスな測位環境に向けて、今後もIMES(※2)なども含めた開発を行っていきたいと考えています。

※2 IMES:Indoor Messaging Systemの略称。 みちびきと同じ信号形式で受信が可能な屋内測位システム。

―― ありがとうございました。

小暮 聡さんプロフィール・略歴

(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)

 宇宙利用ミッション本部 衛星利用推進センター

 準天頂衛星システムプロジェクトチーム併任

1993年 宇宙開発事業団 入社 中央追跡管制所に配属
2001年 アメリカ留学から帰国後、ミッション推進センターにて準天頂衛星システムの立ち上げに従事。その後準天頂衛星システムの開発に関わりながら現在に至る。
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